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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)859号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人勝本正晃の上告理由第一点について

いわゆる裁判の脱漏があつた部分の請求はなお当該裁判所に係属するだけのことであるから、その請求についてすでに裁判をなすに熟する以上これについて直ちに裁判をなすことを得べく、これがために改めてさらに口頭弁論を経るの要がないことは言を俟たないところである。所論家屋番号の誤記の如きは別に更正する方法があつて原判決の執行不能の問題を生ぜず、これを理由として追加判決は口頭弁論を経べきものとすることはできない。所論は理由がなく、違憲の主張はその実質は単なる訴訟法違反の主張にすぎず採用することはできない。

同第五点について

罹災都市借地借家臨時処理法一〇条による借地権の対抗を受ける第三者の中には、当該土地について借地権を取得しその上に登記した建物を所有する者をも含むものと解すべきである。けだしそうでないと罹災借地権者の保護を目的とする同条の精神を没却するに至るからである。従つて論旨は採るを得ない。

同第八点について

対抗力を有する土地の賃借権に基きその対抗を受ける第三者に対してその所有にかかる地上建物の収去土地の明渡を請求しうることは、当裁判所の屡次判示したところである(昭和二七年(オ)八八三号、同二八年一二月一八日、二小法廷判決、昭和二七年(オ)三〇六号、同二九年六月一七日一小法廷判決、昭和二八年(オ)七六一号、同二九年一〇月七日一小法廷判決、昭和二七年(オ)一二九一号、同三〇年四月五日三小法廷判決参照)。論旨は理由がない。

その余の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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